さよなら乗車

みどりの窓口では、事前に富山駅で楡原から神岡鉱山前までの乗車券を購入する。わざわざ、楡原〜猪谷間のJR運賃を二重に払ったのは、神岡鉄道に自分が乗ったという証拠を、切符という形で残しておきたいため。
売店で新聞を買い、富山から猪谷まではキハ120の2両編成に乗る。中国地方のローカル線でよく走っている車両だ。何故かカーテンはほとんど閉じられており、車内は薄暗い。途中から大量の高校生が乗りこんできたが、そのほとんど全員が越中八尾で下車。あっという間に車内はがら空きになる。初老の夫婦連れがカーテンを開け、外の景色を見ていた。
猪谷には8:22着。ほとんどの人が代行バスに乗りかえる。残ったのは…全員同業者か…。
猪谷駅には駅本棚があり、中には少女マンガだの雑誌だのプロレタリアート文学やら脈絡なく並んでいる。8:55分の列車まで、駅構内を撮影したり、駅舎を撮影したりして時間をつぶす。来たのはおくひだ1号。KM101。乗り込んだ列車は、本当に人家も何もない辺鄙なところを行く。線路の下に見えるのは道路だけ。うとうとして、気がつくと列車は止まっていた。どこですか?聞くと、神岡鉱山前とのこと、あわてて切符を見せて降りる。
神岡鉱山前駅から神岡大橋駅まで少々歩く。神岡鉱山前駅から歩くと、こじんまりとした家や商店が軒を連ねていて、ポツポツと人影が見えるばかり…ゴーストタウンか?と、ちと暗い気分になったんだが、そんなことはなかった。やがて、小さいながらも商店が軒を連ね、車や人通りのある通りへ出たのでほっとした。町のどこに行っても水の音がする。軒先には朝顔が植わっており、きちんと手入れされているのが印象に残った。神岡船津郵便局に寄ったあと、二軒ほど本屋を巡る。一見は普通、もう一軒がすさまじかった、入口の右側にカウンター、左側の奥のほうに向かって棚が続いているわけだが、まず、棚の配置が普通じゃない&並べられている本が古い&種類がヘン。とりあえず、一般向け新刊マンガの棚の前にエロビデオを並べるというのはちょっと間違ってると思う。新潮文庫の文学書、岩波ジュニア新書、講談社ブルーバックスなど…一様に退色がすすんでいる。『放射線計測の理論と演習』なんて誰が買うのだろうか?奥に行けば奥に行くほど棚の様子は混沌さを増し、文学全集の一部とか、色あせた箱に入っているおもちゃとかがおいてある。ケイブンシャの大百科シリーズもある。何か買わなくちゃ…と思って買ったのが以下二冊。

ひょっこりひょうたん島〈1〉ライオン王国の巻 上 (ちくま文庫)

ひょっこりひょうたん島〈1〉ライオン王国の巻 上 (ちくま文庫)

 
ひょっこりひょうたん島〈2〉ライオン王国の巻 下 (ちくま文庫)

ひょっこりひょうたん島〈2〉ライオン王国の巻 下 (ちくま文庫)

15年も前の本が新刊同様に並んでる。
飛騨神岡駅まで歩き、そこから乗車。終点の奥飛騨温泉口駅で降りる。駅前をぱちぱち撮っているとすぐ発車の時間になる。券売機では新1000円札が使えず、隣の自販機はお札を投入する機構が壊れていたのには焦った。帰りの車両に乗っているのもほぼ同業者。えーつまり、一般の乗客はほぼゼロ。貨物輸送が廃止になってから、よく今までもってこれたもんだなぁ、と驚く。帰りは山側に座った。見えるのは崖ばっかりだが、いたるところから湧水が涌き出ていて、水の音が聞こえる街、と言う印象がさらに強くなった。
あと、猪谷駅にて線路内に立ち入り運行を妨害したDQNがいるのはお約束。
降りる際に、切符を貰えないか、と頼み込むと、鋏を入れるならOKとのこと。ここでは、鋏は切符の使用開始を証明するのではなく、その切符が無効であることを示すものとして使われているようだ。これも無効印の仲間かね…ちなみに鋏痕は□。
鋏画像を出してみる。

さて、ここから角川までは代行バスに乗る。帰省に名を借りた旅行は続く。