前準備

夕方とはいえ、暑く日差しも強いので、自転車を駆って、少し離れた緑の窓口が複数存在し、北斗星の寝台券を含め周遊きっぷを数分で出した若い神駅員のいる駅へ行くのを止めて、最寄の駅へ行くことにした。その駅は窓口がひとつしかなく、後ろに行列を作ってしまう原因にならないよう経由を書いた紙を用意して。でも、字が汚い&記載が不充分だと紙があろうがなかろうが同じだ。と思い知った。特に今回は購入したのが連続乗車券ということもあり、かなりの手間をかけてしまった。当然、後ろには数人の待ち客が生じ、並んだお客さんに対し、別の係員氏がMVに誘導していた。発券にかかった時間は10分くらい。
今回購入した切符の経路は、上野から高崎線上越線信越線、北陸線を経由し、富山から高山本線に入り岐阜、熊本に至るヘンテコな経路だ。神岡鉄道と九州寝台に乗ることを目的としてこの経路は組まれた。ついでに、夜行急行「能登」号も。
手渡された横長の切符を見ると、有効日数の欄が空白になっていた。手渡す時に駅員氏が、「有効期間が11日間になりますがよろしいですか?」と言っていたのは、ははぁ、空白部分を書き込んで置いてくださいということなのかな?と思いつつ、でもこれって有価証券偽造か改変かで法律上問題があるんじゃなかろうかと思いつつ、11、と数字を書きこんだ。なお、このときは気付かなかったが、発券された2枚の切符のそれぞれには、どちらを先に使用するかを示す欄があり、この部分の数字を記入し間違えていた。よっぽど慣れないのだろう。申し訳ないとは思ったが、こちらとしては学割の節約という正当な理由があるわけで、まぁ、勘弁ということで。
能登の出発時刻は23:33。余裕を見て1時間ほど前に駅に行く。自動改札は通れないので、有人改札へ行くと、そこにいたのは自分の切符を発券した駅員氏だった。連続1と連続2の番号の部分を記入し間違えてるのを直し、改札印を押すと言った。「良い旅行を」
急行「能登」で富山まで出る。能登は高崎までは通勤ライナーとしての役割を持っているようで、自由席は八割がた埋まる。が、そこから先は空気輸送状態。禁煙自由席は十数人、喫煙自由席は数人が乗車といったところ。なかなか寝付けずにロビーカーの自販機までジュースを買いに行く。かつては営業していたであろう無人のカウンター、そしてソファーとそこでごろ寝している数人の旅行者…。あまりにも寂しい風景だった。相場よりも10円高いジュースを口にした後も、寝たり、起きたりを繰り返す。昔から、夜行列車にしろバスにしろ寝ることができなかった、というよりむしろ、しなかった。小学生の頃、帰省に使っていた夜行バスの窓から見える夜の風景−それは、暗い森の中に不意に浮かび上がる街灯に照らされた人気のない道路や、煌煌と輝く無人の駅舎だったりするのだけれど−は、就寝9時が絶対であり深夜外出することが出来なかった自分にとっては十分魅力的であり、非日常的であったせいかもしれない。座席を向かい合わせにして、片側に頭を、もう片側に体を乗せ、少しでも楽になって寝ようと心がける。が、駄目だ。去年乗った特急オホーツク9号を思い出す。あの列車も札幌圏の通勤ライナーとしての役割を果たしており、旭川あたりで大半が降り、遠軽ではひと車両数人だったことを思い出す。ふと思って時刻表を繰ってみると、当然というべきか、なくなっていた。
気がつくと、外が明るくなり始めていて、止まった駅の駅名票からは「入善」の文字が見える。そして、駅を離れると水田…水田…所々に雑木に囲まれた立派な住宅が散見される。なかには藁葺きとおぼしきものまである。自分の携帯では4分ぐらいではないかと思っていたが、列車に2分ほどの遅れが出ています。とのアナウンス。富山ライトレールの始発にに間に合うかな…と気になり始める。富山着は5:41、富山ライトレールの始発は5:57。乗換え時間は16分もあれば十分だと思っていたが、無理だった。