18きっぷ消化の旅

 朝起きたのは10時半、家を出たのは11時近く。当然そう遠くへは行けない。なんとなく、鹿島鉄道鹿島臨海鉄道の未乗区間を乗ることに決めた。
 柏で土浦止まりの快速に乗りかえると、来たのはE501系のトップナンバー、当然各駅でジーメンス特有の発車音を聞かせてくれた。
 土浦で乗換、昼食がわりに駅そばを食べ、水戸へ。
水戸で一旦改札を出て、みどりの窓口へ向かう。鹿島臨海鉄道のきっぷを買うためだ。「自動改札は通れませんので、係員のいる改札をお通りください」の声と一緒に渡されたのが、120mmのマルス券。
 時間的に厳しかったのだが、何とか乗れた。
 水戸を発車してしばらくは、水郡線常磐線と併走する。やがて、線路は高架になり、常磐線の線路を見下ろすようになる。やがて別れだし、東水戸、常澄と地肌が剥き出しになった田んぼの中にぽつんと立った駅が続く。いったい誰が使うのだろう?
 大洗でようやく周囲にまとまった人家が現れる。ここで多くが下車。いつのまにか車掌氏が乗りこんでいて、車内で乗車券を発売している。腰には発券器と思しき機械。それでも、すべてのボックスシートには数人の客がいる。そして車窓は再び枯れ山しか映らなくなる。
 新鉾田で下車。当然無効印をもらい、鹿島鉄道の鉾田駅へ向かう。
 新鉾田駅〜鉾田駅間は、以前に逆のルートで一度歩いたことがある。そして、歩くたびに悲しくなる。手近なバス停の時刻表を覗きこむ。一時間に一本すらなかった。
 鉾田から、鹿島鉄道に乗る。1526発の石岡行きは最新型のKR500系であった。鉾田駅で、石岡行きの乗車券を求める。どんなきっぷが出るのか興味を持って見ていたら、端末で発券した。硬券の設備はあるようだが、めったに使うことはないのだろう。休日に訪れると、一日乗車券が発売されるのだが、今日は平日。学休日に一日乗車券を発売してもらうと、沿線の郵便局を訪問するのに便利なんだが、経営難の鹿島鉄道にそこまで期待するのは酷だろう…
 樽見鉄道神岡鉄道平成筑豊鉄道のように、経営を支えていた貨物輸送が終了してしまい、苦境に立つ中小私鉄は幾つもある。鹿島鉄道の場合は、玉里へのジェット燃料輸送である。それが、2002年に終了してからは、経営が苦しくなり、沿線自治体は鹿島鉄道に対し、5年間の公的支援をすることに決めた、その支援は、今年で切れる。また、親会社の関東鉄道鹿島鉄道に対し支援を行っているが、つくばエクスプレスの開業で、常磐道の高速バスがやられ、今まで通りの支援が続けられるか怪しい。
要するに今年が存続の山場である。そして、何とか廃止を避けようと幾つかの団体が積極的に活動している。輸送密度が鹿島鉄道寄り多いにもかかわらず、沿線自治体の足並みがそろわないことで廃線に追いこまれてしまった日立電鉄に比べれば、鹿島鉄道はしあわせだ、と思う。
 常陸小川でキハ600系と交換。601か602かはわからなかったが、今年で70歳近くになる現役最古参の気動車である。いつのまにか、車内は結構混んでおり、車掌氏が乗車券を販売する。端末券などではなく、概算鋏で穴をあけるタイプの車内補充券だ。
 1625石岡着。どんな無札証明をくれるのか楽しみにしていたら、中間改札に係員はおらず、乗車券の回収はされなかった。
 石岡駅下りホームには沢山の学生。ふと、鹿島鉄道の機関区を見やると、キハ431がエンジン音を轟かせていた。鹿島鉄道がいつまでも走りつづけるよう願いながら、石岡駅を後にした。